神様は、それを超えられると感じた者だけに試練を与えるらしい。
これを試練だと呼ぶならば -------・・・・・
超えてやろうじゃないの!
C H A N G E !
朝起きると虫になっていました。
人と入れ替わっていました。
棒になってしまいました。
本が好きでこんな話をよく読んだ。
あぁ面白い。
他人事だから思えるというものだ。
そんなこと起こりっこないって・・・・。
今日は大きくてとても近い満月だった。
赤く染まった月は何だか少し怖かった。
だから今日も読むとしようか、あの本を。
それは少年が突然大人になってしまう話。
パジャマから出た腕や足はとても大きくて、
慌ててママの所に駆けて行く。
「やだっ!もうこんな時間!?」
枕元の時計を見て驚く。
既に寝ている時間だ。本を閉じて慌てて布団に潜り込んだ。
空に見えている月は余計に赤みを増していた。
☆・☆・☆
跡部は部屋で雑誌を読みながらソファーに座っていた。
視界に入った月がやけに赤いな、と感じたが
再び視線を雑誌に戻す。
ドアの向こうで聞こえていたメイド達の片付ける音がしなくなったので、
自分もそろそろ寝るかとベッドに入った。
明日も朝練で早い。部活の疲れもあってか、すぐに眠りについた。
☆・☆・☆
「お坊っちゃま、朝でございます」
うーんと布団の中で唸って潜り込む。
もう少しだけ寝かせて。
「部活に遅れてしまいます」
部活-----?そんなもの入ってないわよ
「部活なんてやってないよ。もう少し寝かせてよママ」
「お坊っちゃま、起きてください」
そこではと気がつく。お坊っちゃま!?
いつものママの声じゃない。
しゃがれてて・・・・・そう、まるでおじいちゃんみたい。
恐る恐る顔を覗かせると、そこには見たこともないお爺さんがいた。
「だ、誰ですか?」
「寝ぼけていらっしゃるんですか?じぃです」
眉を下げて困った顔をした。
知らない。わたしにはおじいちゃんがいない。
顔を出して辺りを見回す。
自分の部屋の二倍、いやそれ以上あろうか
その広さに目を大きく見開く。
もしかして・・・・・これが既成事実ってやつだろうか。
でもベッドにはわたしひとり。
「あのー-----・・・・」
お爺さんを見ると、何でしょうと優しく笑う。
「ここは・・・・どこですか?」
「跡部景吾様のお宅ですが。どうかなさったんですか?お坊っちゃま」
お坊っちゃま・・・・・?
ガバッと起きて鏡がないか探す。
あった。部屋の隅。みつけて走る。
鏡の前に立ちはだかって・・・・・愕然とした。
「なにコレーーーーーー!!!!」
鏡の中の跡部が自分を指差す。
わたしが顔を触れば鏡の中の跡部も顔を触る。
あわわ・・・・と足をジタバタさせてみても同じだ。
というか跡部が足をジタバタさせていることが面白い。
いや、そんな事を言っている場合じゃなくて!!!
「どうしよう!跡部になっちゃった!!!どうしよう!!!おじいちゃん!!!」
じぃと名乗った人は眉を下げ、どうしたものかと迷っていた。
「景吾様は元から景吾様でいらっしゃいますから。それより部活に遅れますよ」
ほらほらと背中を押されて部屋を出る。
連れて行かれたのは多分ご飯を食べるところ。
「うわー!でっかい!」
「今日もいつもの朝食でいいですか?」
「あぁ・・・・・ハイ」
「・・・・?」
注文を聞きに来たメイドが首を傾げた。
それはそうだろう。見た目は跡部景吾なのに中身がすっかり違う。
「スゴー----・・・・」
食べきれない程のフルーツとパンにスープ。
家の朝ご飯とは大きな違いだ。
「いただきまーす!」
訳が分からないけど取りあえずはいい方向に行ってるみたいだ。
ご飯を食べ終えると、自分の部屋に戻った。
コンコンとノックがして、おじいちゃんが部屋に入ってくる。
「そろそろ出る時間でございますよ。着替えてください」
手渡されたのは見慣れた氷帝のテニス部ジャージ。
「え・・・・・?コレ着るの?」
「左様でございます」
「もしかして・・・・テニスするの?」
「部長でいらっしゃいましょう?」
顔から血の気が引くのが分かった。
そうだ。跡部は部長だった。それも200人もの部員の。
取りあえず着替えて外にあった車に乗る。
「お待ちしておりました」
「あ・・・・はぁ。お願いします」
やはりここでも首を傾けられ、わたしは黒塗りの高級車に乗る。
見慣れた学校に着いたのは10分後。
車から降りるとまだ時間が早い為生徒はいない。
大きなテニスバックをしょって歩き出す。
きょろきょろと歩いていると、目の前に見知った人を見つけた。
「忍足ー!!!!!」
ぎょっとしたように振り返ったその人物は、わたしを見るなり後ずさった。
「おぉ、今日はやけにハイテンションやな。跡部」
「違うの!わたしなの!!!!」
「・・・・・?」
は?と顔を近づけて顔を見られる。
「どっからどう見ても跡部やねんぞ?」
「でもちーがーうーのー!!!!」
わたしは忍足のジャージを引っ張りながら必死に訴えた。
その顔がどんどん怪しむものに変わっていく。
「まぁ・・・・・それにしてもキショイな自分」
半べそをかいているわたしを見て、忍足は言った。
「笑い事じゃないよ」
「・・・・・」
忍足が下を向いて押し黙る。何だろうと下から覗くと、なんと笑っていたのだ。
「ちょッ!!笑ってる場合じゃないんだけど!!!」
「わ、分かってんねんけど、その行動がツボや」
「わーん!!忍足のバカ!」
わたしは泣き喚くと忍足に強引に手を引かれた。
分かったから大人しくしときと言われたが、どうにもいかない。
チキショウ!と背中を殴ってやった。
でもどうして跡部となんて入れ替わってしまったんだろう。
ただのクラスメイトで隣の席で喧嘩友達だったはずなのに。
それよりも怖い事を考えついてしまった。
わたしが跡部の中に居るということは・・・・。
わたしの体は---------・・・・・・?
校門に目を向けると、そこには誰もいなかった。
わたしは忍足に手を引かれながら部室へと向かった。
跡部がどうか変なマネをしませんように。
自分の事はすっかり棚に上げてわたしはそんな事を考えていた。
next→→跡部ver.
♪♪♪
跡部様と一日入れ替わりツアー!
跡部ファンの方申し訳ありません!(土下座)
でもどうしても書いてみたかったんです。
跡部様とヒロインが入れ替わってしまう。
ドラマでは定番ですけどね。
次は跡部バージョンです。