それはいつもそこにある。
安心できる笑顔と少しの不安























解き放て!青春





















フェンスから覗くように見ると、テニス部は丁度練習を終えた所だった。
菊丸先輩と大石先輩が話しているのが見えた。



わたしはリョーマの姿を探して、視線を彷徨わせた。
白い帽子が目立っていたので、その姿はすぐに見つけられた。



気付いてくれないかな。
じっと後姿を凝視していると、ふいに後ろから肩を叩かれた。



「あ、新橋くん」
同じクラスの新橋くんがいて、手にCDを持っていた。
「これ、この前が貸して欲しいって言ってたやつだろ?」
記憶を探って、そう言えばと思い当たる。
「そうそう。持ってきてくれたの?」
新橋くんは頷くと、にこりと笑ってCDを差し出した。



「返すのはいつでもいいから。あ、それとお礼も別にいいよ」
ふざけて言うのを笑って過ごして、CDを受け取った。
ありがとうと言うと、そう言えばと新橋くんが切り出した。



「越前待ってるんだろ?」
「うん、そうだけど」
そっか、と言ってふざけるような顔つきになる。
「相変わらず仲いいのな」
わたしは顔が赤くなるのを感じて、新橋くんの腕を叩いた。



「あ、後ろで怖い顔してる奴がいるからもう行くわ」
新橋くんの視線がわたしの後ろに向かってたので、わたしも後ろを向く。



「あ・・・・終わったの?」
わたしの言葉を無視して、リョーマは新橋くんを見ている。



「何か用?」
「CD貸しただけだよ、そんな怒んなって」
じゃあな、と言って新橋くんは校門に向かって歩いて行った。
何故か機嫌が悪いリョーマを盗み見た。



「リョーマ・・・・・?」
もう一度機嫌を伺うようにリョーマを見る。
「さっさと帰るよ」
帽子を目深に被りなおして、リョーマはそっぽを向いて歩き出した。
わたしも慌ててその後ろ姿を追う。



「ちょっ!ちょっと待ってよ」
いつもより幾分早いその足取りをいぶかしみながらついていく。
CDをカバンにしまう余裕も無い。
わたしは何度もリョーマを呼んだ。
リョーマは振り返らない。



いつもなら困ったように後ろを振り返って言うのにな。
歩くの遅いんじゃない?って--------



スタスタと歩調を変えずに歩くリョーマに小走りで追いつくと、その手を取った。
ぐんと引かれる事で、リョーマの足は止まった。
「なに?」
なにと言われてわたしは押し黙る。
何と言えばいいのかわからない。



第一リョーマが何に怒っているのかわからない。



「何か・・・・怒ってるみたいだから」
だんだん小さくなっていく声を分かっていながら、顔も俯いていく。
わたしは掴んだままのリョーマの手を見た。
ぶらんと力を抜いたままのリョーマの手。
わたしが掴むのをやめたらきっと放れてしまう。



「別に・・・・」
珍しく釈然としない答えに、視線を上げた。
目深に被ったままの帽子はリョーマの目を隠したまま。
陰になっているその顔からは、どんな表情をしているのか伺えない。
「じゃあ何で怒ってるの?」



「だから怒ってないっ・・・」「怒ってる!!!」



やっと上げた顔は、目が大きく見開かれていた。
わたしが珍しく声を荒げたから驚いているんだろう。
負けるもんかと歯を食いしばると、リョーマは溜息をついた。



「別に怒ってないよ。強いて言うなら・・・・」
首を傾げて次の言葉を待つ。リョーマにしては珍しく言い淀んでいる。



「イライラはしてたけど」



リョーマの目はわたしが持ったままのCDをじっと見ている。
わたしは、なんでと言おうとして口をつぐんだ。
わかってしまったから。
リョーマが何でイライラしてるのか。



「なに笑ってんの?」
不機嫌な声に弁解をしようとして、手を引っ込める。
リョーマはそれを許してくれなかったけども。



「引っぱんないでよ」
「うるさいよ」
リョーマはテニスバックをしょい直して、ぶっきらぼうに言った。
不自然な手のつなぎ方に小さく笑うと、リョーマは顔だけを振り向かせた。
「変な奴・・・・・」
照れたように言ってから、苦笑いをした。



リョーマがヤキモチを妬いてくれたことがこんなに嬉しいことだなんて。
無意識に緩む口元を必死に抑えながら思った。
乱暴に引っ張られる手も、痛くはなくて。



それがリョーマの優しさだと思うと嬉しかった。
短い道のりを歩きながら大好きだよ、と呟いた。



「知ってる」



自慢気に言ったその顔には、いつものいじわるな笑顔が浮かんでいた。




























梨花様からのリクエストでした。
状況設定はおまかせとの事でしたので
好きに書かせていただきました(笑)
新橋くんはオリキャラです。王子に睨まれる可哀想な役・・。
それにしてもリョーマは名前呼んでませんね。
ハナのイメージですけど。

梨花様のみお持ち帰り可です





















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