それはいつもそこにある。
安心できる笑顔と少しの不安
解き放て!青春
☆
フェンスから覗くように見ると、テニス部は丁度練習を終えた所だった。
菊丸先輩と大石先輩が話しているのが見えた。
わたしはリョーマの姿を探して、視線を彷徨わせた。
白い帽子が目立っていたので、その姿はすぐに見つけられた。
気付いてくれないかな。
じっと後姿を凝視していると、ふいに後ろから肩を叩かれた。
「あ、新橋くん」
同じクラスの新橋くんがいて、手にCDを持っていた。
「これ、この前が貸して欲しいって言ってたやつだろ?」
記憶を探って、そう言えばと思い当たる。
「そうそう。持ってきてくれたの?」
新橋くんは頷くと、にこりと笑ってCDを差し出した。
「返すのはいつでもいいから。あ、それとお礼も別にいいよ」
ふざけて言うのを笑って過ごして、CDを受け取った。
ありがとうと言うと、そう言えばと新橋くんが切り出した。
「越前待ってるんだろ?」
「うん、そうだけど」
そっか、と言ってふざけるような顔つきになる。
「相変わらず仲いいのな」
わたしは顔が赤くなるのを感じて、新橋くんの腕を叩いた。
「あ、後ろで怖い顔してる奴がいるからもう行くわ」
新橋くんの視線がわたしの後ろに向かってたので、わたしも後ろを向く。
「あ・・・・終わったの?」
わたしの言葉を無視して、リョーマは新橋くんを見ている。
「何か用?」
「CD貸しただけだよ、そんな怒んなって」
じゃあな、と言って新橋くんは校門に向かって歩いて行った。
何故か機嫌が悪いリョーマを盗み見た。
「リョーマ・・・・・?」
もう一度機嫌を伺うようにリョーマを見る。
「さっさと帰るよ」
帽子を目深に被りなおして、リョーマはそっぽを向いて歩き出した。
わたしも慌ててその後ろ姿を追う。
「ちょっ!ちょっと待ってよ」
いつもより幾分早いその足取りをいぶかしみながらついていく。
CDをカバンにしまう余裕も無い。
わたしは何度もリョーマを呼んだ。
リョーマは振り返らない。
いつもなら困ったように後ろを振り返って言うのにな。
歩くの遅いんじゃない?って--------
スタスタと歩調を変えずに歩くリョーマに小走りで追いつくと、その手を取った。
ぐんと引かれる事で、リョーマの足は止まった。
「なに?」
なにと言われてわたしは押し黙る。
何と言えばいいのかわからない。
第一リョーマが何に怒っているのかわからない。
「何か・・・・怒ってるみたいだから」
だんだん小さくなっていく声を分かっていながら、顔も俯いていく。
わたしは掴んだままのリョーマの手を見た。
ぶらんと力を抜いたままのリョーマの手。
わたしが掴むのをやめたらきっと放れてしまう。
「別に・・・・」
珍しく釈然としない答えに、視線を上げた。
目深に被ったままの帽子はリョーマの目を隠したまま。
陰になっているその顔からは、どんな表情をしているのか伺えない。
「じゃあ何で怒ってるの?」
「だから怒ってないっ・・・」「怒ってる!!!」
やっと上げた顔は、目が大きく見開かれていた。
わたしが珍しく声を荒げたから驚いているんだろう。
負けるもんかと歯を食いしばると、リョーマは溜息をついた。
「別に怒ってないよ。強いて言うなら・・・・」
首を傾げて次の言葉を待つ。リョーマにしては珍しく言い淀んでいる。
「イライラはしてたけど」
リョーマの目はわたしが持ったままのCDをじっと見ている。
わたしは、なんでと言おうとして口をつぐんだ。
わかってしまったから。
リョーマが何でイライラしてるのか。
「なに笑ってんの?」
不機嫌な声に弁解をしようとして、手を引っ込める。
リョーマはそれを許してくれなかったけども。
「引っぱんないでよ」
「うるさいよ」
リョーマはテニスバックをしょい直して、ぶっきらぼうに言った。
不自然な手のつなぎ方に小さく笑うと、リョーマは顔だけを振り向かせた。
「変な奴・・・・・」
照れたように言ってから、苦笑いをした。
リョーマがヤキモチを妬いてくれたことがこんなに嬉しいことだなんて。
無意識に緩む口元を必死に抑えながら思った。
乱暴に引っ張られる手も、痛くはなくて。
それがリョーマの優しさだと思うと嬉しかった。
短い道のりを歩きながら大好きだよ、と呟いた。
「知ってる」
自慢気に言ったその顔には、いつものいじわるな笑顔が浮かんでいた。
梨花様からのリクエストでした。
状況設定はおまかせとの事でしたので
好きに書かせていただきました(笑)
新橋くんはオリキャラです。王子に睨まれる可哀想な役・・。
それにしてもリョーマは名前呼んでませんね。
ハナのイメージですけど。
梨花様のみお持ち帰り可です
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