最初で最後の恋
どうか忘れないで---------わたしが居たこと
最後まで結ばれることはなくても
これが最初で最後の、恋
マネージャーと部長。響きはとてもいいと思う。
実際とても近くにいる存在だったし、他の部員よりもよく分かっていた。
試合で負けた時は心中で慰めたりもした。
軽く触れられた髪の毛に、涙が出そうになったのを覚えている。
ふたりだけでミーティングをすることもあった。
すごく近い距離にどきどきして、体中が火照ったりして。
今思い出してもすごく痛くて、暖かい。
跡部はとてもよくモテた。
容姿のこともあったけど、なによりテニスが上手かった。
そして抜きんでたカリスマ性に魅せられた人も多かったんだとおもう。
それは尊敬するべき所でもあったし、憧れでもあった。
跡部が誰かと付き合うたびに、わたしは気付かない振りをした。
自分の心の声に------
その姿を見るくらいなら、自分の気持ちを打ち明けたらいいって。
忍足くんは言ってくれたよね。
けど----------ダメなんだよ。
距離が近すぎた。わたしと跡部の距離。
テニスの仲間。話しやすい一番の友達から抜け出せなくなってた。
それは雰囲気でわかった。跡部が決して他には見せること無い表情。
気を許してくれる事はとても嬉しかった。
それでも、わたしを呼ぶその声に、信頼と尊敬の念。
それ以外に特別な感情はなかった。
まるで家族のように過ごしたね。
苦しいことも分け合ったね。
それで十分だと
本当は思えない
引退してから、わたしは部活に行かなくなった。
跡部は未だ練習に行っているみたいだけど。
部活以外でつながりは必要ない。
それは酷というものだよ。
見下ろすテニスコートでは、跡部が指揮を出してる。
それでいい。わたしが余計な横槍を入れる必要なんてない。
もしまたテニスで関わることがあれば。
その時は。
また隣に立てたらいい。
そしてそれを当然だと思ってくれたら。
叶うことはなかったけれども。
とても楽しい時間を過ごした。
これ以上辛くて楽しくて幸せな恋はしない。出来ない。
これが最初で最後の----------恋。
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