遠ざかる君に手を振った
ありがとう----------------
おむかえバス
あの頃の世界はふたつに別れていた。
『俺たちの世界』と『外の世界』
はバスで学校まで通っていた。
俺の部活が終わると二人でバス停まで行った。
そして冷え性なの手を俺が暖めた。
見よう見まねで始めたのテニス。
休日に行ったテニスコートで、ふたりでテニスをした。
全然あたらないラケットを責めて、笑った日を。
「もう、終わりにしようか」
そう言った俺を責めもしなかった。
試合に勝つ事もできなくて、を傷つける言葉ばかり吐いた。
それなのに……
ある日の放課後、は俺の練習が終わるのを待っていた。
まるで習慣のようにふたりでバス停に向かう。
けれど手は繋がなかった。
の手はきっと冷たいだろうけど。
ちょっと間隔をあけてバス停の前に立った。
ふたりの間を冷たい風が吹き抜けた。
しばらくするとバスがきた。
乗客はひとりもいない。
はバスステップに乗ると、
くるりと振り向いた。
「大好きだったよ……」
精一杯の笑顔で手を振った。
バスは静かに走り去った。
を乗せたまま-----
そして世界は変わった。
『俺の世界』と『君の世界』に。
遠ざかる君に手を振った。
ありがとう------------
幸せに、なってください。
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キヨの悲恋でリクがあったので。
雰囲気が出てればいいな。
悲しいオレンジに別れを告げた11月の空。
04/10/23