目隠し 暗闇、洞窟、秘密基地、かくれんぼ。 すべては彼の為に。わたしの為に。 ------------もういいかい? 「やっぱ不二くんて恰好いいね!」 オレンジ色の空の中にピンク色を見つけて、 わたしはその声に顔を下げた。 気が付けばテニスコートの側で。 声を上げている1年生とか、そんな人たちが目についた。 女の子二人は熱心にコートの中を見ていて わたしもそこに視線を移した。 見なくても感じるよ。大きすぎる存在感。 「周助!!」 前いにいた女の子たちが振り返る。 わたしを見て驚いて、嫉妬の眼差しを。 元々下の名前でなんて呼んでなかった。 名前を呼ぶことすら憚れた。 それくらい近くて遠くて・・・・・・大きかった。 「。どうしたの?」 ゆっくりとフェンスに近づいてきて、笑った。 花が咲くように。風が通り過ぎるように。 周助は春みたいだね、と言ったらなにそれと笑われた。 「別に。空にピンク色を見つけたから知らせに来たの」 え、と言って見上げた空にはまだピンク色がうっすら残ってた。 わたしは見ない。空を見る周助の顔が好きだから。 「本当だ。は昔からピンクが好きだね」 「そうかな」 「そうだよ」 ユニホームから伸びている手が、とても綺麗だ。 人形のようだと思った。 「今日は一緒に帰る?」 「どうしよう。周助は?一緒に帰りたい?」 「そうだな、久しぶりだからね」 「じゃあそうしよう」 練習が終わるまで、わたしは4つ葉のクローバーを探すことにした。 持っているだけで幸せになれるそれを見つけるために。 わたしの周りにいる人は、わたしの言葉に首をかしげる。 きっと感性が豊かなんだね、と言われたこともある。 ませていると言われた事もある。 でもいいんだ、そんな事。 人に分かってもらおうなんて思わないから。 周助が分かってくれればいい。 一緒に頷いて笑ってくれればいい。 きっとわたしに目隠しがされていても、彼だけは見つけることができる。 隔離された小さな現実で、幸せの葉が揺れた。
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