「本当に見たんですよ〜〜妖精」



うふふ、と顎に手を当てているブラウン管先の芸能人に
この人大丈夫なのかな、なんて心配してしまった。
そんなもの本当にいるわけないのに、ね。




























   *

The miracle in which it flew down





































出来すぎた人物というのは必ずいるものだが。
すべてにおいてパーフェクトともなると、いささか気が引けるというものでもある。
跡部景吾はまさにそんな人物だった。
勉強・容姿・礼儀作法どれを取ってみても他に引けを取らない。


------- 性格を除けば・・・・だ


その性格たるや目の前に立ちふさがる人物がいれば薙ぎ倒し
欲しいものなら何を駆使してでも手に入れる。
その強引さがまた良しとするひともいるのだから物好きと言った方が言いのだろう。


彼の前に立つと何だか畏縮してしまう。
自分の持つすべてを差し出しても敵うものなどひとつもない。
そんな時は身を竦めてやりすごすのが一番だ。


そんなわたしが彼『跡部景吾』とほんの少し近づいたのは、3年になってから。
生徒会という縁のなさそうな場所に、これまた彼目当ての友達が一緒に入ろうと
申し出てきたのだけれど、生憎選挙というものがあり、
彼女の目論見は見事外れ、わたしだけが生徒会に入る事となってしまった。


書記という何とも面倒な役柄に就いてしまったものだと
目の前の膨大な資料を見て思う。



本来ならわたしは落ちるはずだったのだ。



生徒会なんて出来る人柄も器量も持ち合わせてはいない。
そして何より会長が跡部景吾だということが一番嫌だった。


正直に言えば怖い存在なのだと思う。
顔も好みだし、その立ち振る舞いと言ったらとても中学生には見えない。
年上の女の人が寄ってくるのも頷ける。

だが、生徒会となると話は違う。
彼もそのポジションに甘んじているわけではない。
やるべき仕事はそつなくこなし、教師からの信頼も厚い。


だから嫌なのだ。
パーフェクトにこなす人間が側にいると、自分の粗が簡単に晒されてしまう。



「そんな事もできないのか」

目で言われているような気がしてならない。
それはもしかしたら自分の思い過ごしなのかもしれないけれど。
そう思っているうちは自分もまだまだなのだと、そう思う他なかった。




「つ、疲れたぁ〜〜」
帰るなりただいまの一言も発しないまま階段を上がった。
そしてベッドに身体を投げ出すと、カバンを放り投げた。
本当ならこんな事はしない。けれど今日ばかりは違った。



近づいて来た学園祭に向けて、生徒達も浮き足立っていた。
それはやる気との比例につながるのでとても嬉しい事ではあるのだが。


クラスごとに模擬店やら劇やら出すものの案が生徒会に提出される。
それに認印を押されれば出してよし、否ならば考慮の余地ありなのだ。
マンモス校と言われる我が学校で、これは酷すぎやしないかと思った。


生徒会の人数は毎年決められていて、それが増えたり減ったりの例外は皆無に等しい。
だからこんな時ほど困る事はない。学校行事ともなると目を通す資料の数が半端ない。
目の奥が何度も鈍い悲鳴を上げ、その度に目頭を抑えるが何の効果もない。


溜息をついて周りを見回せど状況は同じなので自分ひとりだけ弱音を吐くわけにもいかない。
この図はなんだろうか、と考える暇も無く新たな資料に目を通す。
いっその事すべてに認印を押してしまえばいいのに。
上座にいる会長こと跡部景吾を見ると、彼もまたマジメに資料を読んでいる。
会長があれなのだから下に就くものが手を抜くわけにはいかない。



あの時間ほど嫌な事はないな、とベッドから少し顔を上げた。
時刻は7時を回ったところ。ようやく帰路についたのに。
やることが多すぎて嫌になってしまう。
確か明日までに提出の課題があったはずだ。


生徒会に入っていると、このような提出物も疎かにできない。
やだやだと溜息を零して机に座った。
ふと部屋の真中に置いてあるテーブルの上に、見慣れないものを見つけた。


「宅急便かぁ、気付かなかったな」
いつの間に来ていたのだろうか宅急便が置いてあった。
宛名先を見ると確かに自分の名前になっている。
送り先には懐かしい叔父の名前が書いてあった。



「あの叔父さん!?」
親戚の中でもただ一人、変人だの変わり者だと呼ばれた叔父がいた。
彼は遠くどこかに暮らしているようだが、その真相は知らない。
なぜ叔父が変人だと呼ばれるようになったのか、
詳しい事はもよく知らなかった。親戚中が口を閉ざしていたからだ。


だがは一度だけその叔父に会った事があった。
叔父は水晶のようなビンに入った透明な水を見せてくれた。
「これはね、人魚にもらったんだ」
まるでおとぎ話のようなそのビンには胸をときめかせた。
だが周りの大人たちはそれを快く思わなかったらしい。
変なものばかり集めて、言っているのを聞いた事がある。
きっとそれが原因なのだろう。



手のひらより少し大きめのその箱を持ち上げて振ってみた。
思ったより軽く、何の音もしない。
「何だろ?」
ラッピングもされていないその箱を開けると、中には手紙が一枚。
散々活字を見てきた後だったので、手紙は後回しにしようと机に置いた。
箱には中身が動かないようにハッポースチロールが敷き詰めてあった。
その真中には、ひとつの小さなビン。


その多きさは20cmほどだろうか。
白い紙にくるまれていて中身が見えなかった。
そっと紙を解いて中身を見てみる。は感嘆の声を上げた。


コルクで止められたその透明なビンには、キラキラと光る粉に包まれた小さな物体。
羽に包まれているので中身は何なのかよく分からなかったが、どうやら人間に近い形らしい。


「開けてみて・・・・・大丈夫かな」
コルクを引っ張ると、どうにも抜けそうにない。
これは気合を入れなければと胸の辺りでぐぬぬ・・と力を入れた。
きゅぽん!と音を立て、コルクが外れる。
中から光の粉を散りばめながら出てきたひとつの固体。


部屋の中をぐるぐると飛び回るその姿を必死で目で追った。
「ど、どうしようッ!!」
捕まえる術も道具も持たずに、ただその姿を目で追う。
ひとしきり飛び回ったその固体は、静かにテーブルの上に舞い降りた。
着地に成功して、俯いていた顔が上がる。は言葉が出なかった。



「会長・・・・!?」



目の前にいたのは、他でもない。あの跡部景吾であったのだ。
































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最近ファンタジー系が多い気がする。
跡部の姿をした妖精がいたらいいな、の妄想
きっと続く・・・・と思われます
跡部ドリをリクエストしてくださったチロ様へ


英語の意味は『舞い降りた奇蹟』です









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