わたしの心に映るこの景色
取り外して見せてあげられたらいいのに
そしたら言葉なんて、必要ないのにね







君が笑う









「(そんな事したら嫌われるだけなのに)」
景吾の周りできゃあきゃあと黄色い声を上げる女の子達を見た。

景吾の背中を見ているわたしは、彼の表情を容易に想像する事ができる。
きっと眉間に皺を寄せて、目はきつく閉じられている。
瞼に少しだけかかる髪、あの青い目を隠してしまっているんだろうな。

教科書を胸に抱いて、わたしはその様子を眺める。
いくらウザイと思っても、邪険にはできない。
それが景吾のいいところ。そして悪いところ。

(雰囲気で悟ってくれっていうのも難しい話なのに)

助け舟を出してあげてもいいけど、あんな景吾を見ているのも結構スキだ。
きっと迷惑極まりない顔をしてるんだろうな、と心の底で笑ってみたり。


「ヤキモチとか妬いたりせぇへんの?」


後ろから話し掛けてきた忍足くんに、目線で「別に」と言うとわたしは景吾に近づく。
そろそろ助け舟でも出してあげようかな。



「けーご!」



今ここに来ました、というようにわたしは景吾に声を掛ける。
周りの女の子たちは、わたしと景吾が付き合ってるのを知っている。
気まずそうに道を開けると、こそこそと何かを言いながら去っていった。


「ふふ、いつもみたいに蹴散らしちゃえばいいのに」
「・・・・それを分かってて見てたんだろ、
「あれ?バレてた?」
「俺が助けを求めるとでも思ってんのか?」
「思ってないから助けたの」


訝しげな顔をして、景吾はわたしを見下ろしたあと歩き出した。
本当は移動教室で、わたしは反対方向に行かなくちゃいけないんだけど。
だけど―――――



「ん、―――・・・・」



差し出された手を見たら、足どころか心までもついて行きたくなっちゃって。
零れ落ちそうな教科書を片手で抱え込むとその手をしっかりと握った。


「やっかいなお荷物」
「そのお荷物を自ら背負い込んでるのは誰よ?」


最初は挑発、次第に苦笑い、そして本当の笑顔。


君が笑うならわたしはお荷物でもいい。
君が落としていった荷物までも背負い込んで
しっかり両手に抱え込んでどこまでも一緒に行きたいから。



だから――――・・・・



「次は屋上でも行きますか?」



笑い合って交わしたその視線に、今日も愛を感じるのです




















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