街ですれ違ったら。

普通の出会いをしていたなら。

私は貴方をどう見ていただろうか、と。























けれどもひそかに私は焦がれる


























が私のいるホテルに来たのはつい最近のこと。

父親に忘れ物を届けるとのことであった。

キラ対策として、本物の娘かを知る必要があった。

だから父親にロビーまで出向いてもらうこととなった。


その後彼が部屋に持ってきたのは、いくつかの着替えと彼にはそぐわない箱。

特に興味も沸かなかったので、私は再びノートパソコンに向き合った。


「竜崎------」


少し躊躇いがちに呼んだのは、の父親だった。

さきほどの小さな箱を胸の辺りに持ち上げて、これを、と言った。

「なんですか?」

「はぁ、娘が持ってきてくれたのですが、生憎甘いものは。どうです?」

僅かに香る甘い匂いに負けて、私はそれを受け取った。

中にはショートケーキとチョコレートケーキが一つずつ。

箱を見てみると、見慣れない名前の店だった。


「フィレアート・・・・?」


甘いもの好きの自分にも分からないのだから、有名な店ではないのだろう。



ワタリに頼んで、紅茶とケーキを用意してもらった。

ノートパソコンを見ながら、口に運んだ。


もう一度ケーキを見直す。

「おいしい・・・・----」

ワタリにも聞いたが、そのケーキ屋を知ることはできなかった。

の父親も知らないという。

そして後日。に直接来てもらうこととなったのだ。


は心持緊張したような表情を浮かべていた。

私のことは前から知っていたらしい。

素性の分からない天才捜査官・・・・・・L。

父親の入れ知恵だと言ったのはまた後の話。

あながち外れてはいないが、自分を天才だと思ったこともない。


その日は、何の話をしたのか。

あまり覚えていない。

自分の持つ限りの知識で、彼女にも分かりやすく話したつもりがどうも失敗だった。

彼女は終始首を傾けて、頷いてはいたもののさっぱりという顔をしていたからだ。


どこから話が逸れたのか、読書の話になり、シェイクスピアの話。

そしてロミオとジュリエットの話題が持ち出された。


彼女はどうしてあのふたりは死ななくてはならなかったんでしょうね、と言った。

私は、家柄の問題歴史的背景などを持ち出したような気がする。

その話を聞いていた彼女は、ふと間を置いてこう言った。


「二人は黄泉の国での幸せを願ったからではないですか」


的外れなような、核心をついているような奇妙な感覚に襲われた。

私とは全く違うものの見方をする。

それは事件に優勢とか、そんな事ではなく。人として。


そしてなにより、は私を一人の人『竜崎』として接していた。

それはワタリに近いものを感じた。

だから知りたくなった。彼女が何を考え、何を思って生活しているのか。


そう気づいてから、行動しようとしたものの、何をすればいいかわからない。

仕事以外のことで、特に女性とプライベートを過ごすことなどない。

試しにワタリに聞いてみると、「持ってきていただいたケーキでお話されては」と言った。

私はその提案を受け入れることにして、彼女を誘った。


その旨を伝えた時、はひどく驚いた顔をしていたが

少し俯き加減に、はいと答えた。

なによりも嬉しい瞬間だった。


だから私は今日もドアが開くのを待っている。

大好きなケーキと、大好きな貴方が笑顔で現れるのを。

まだ伝えきれていない気持ちを胸に秘め。

私はひそかに貴方に焦がれる。






















Lとの出会い。竜崎バージョン。
なかなに難しいな。




04/10/26
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