窓際からいつも見下ろしていた景色。
そこに変化が訪れた日。











ジンジャークッキー











つまらない授業の合い間にすることは、ぼうっと外を見ること。
グランドには人が居ることもあるし、いないこともある。
体育をしているクラスがあればそれを眺めているし、
何もなければないでただその土をじっと見ているだけ。

今日は体育をしているクラスがあり、外では騒がしい声が響いていた。
俺の教室からは、グランドがよく見えた。
生徒があちらこちらに散らばっている。
それを眺めていると、1人の女が校舎に近づいてきた。
そしてこっちを向くと、両手を振っている。

(・・・・・――――誰じゃ?あの女))

なおも手を振りつづける。俺は凝視したが、まったく見覚えがない。
すると前の席でくすくすと笑う声がした。
前に顔を向けると前の席の女が手を振り返していた。
(コイツの知り合いか)
もう一度グランドに視線を戻すと、あの女は丸井となにやら話をしていた。
丸井がジェスチャーを含めて何かを言うと、女が腹を抱えて笑う。
それを見た丸井が何かを言ったのだろう、女は手を合わせて謝っている様子だった。

そのうちに女は違う生徒に呼ばれてそっちに走って行った。
(忙しい女じゃのぅ)
それきり丸井のクラスはどこかへ行ってしまい、見えなくなってしまった。

屋上での昼メシを食べ終えると、俺は自分の教室に向かっていた。
両手をポケットに突っ込みぼうっと前を見て歩く。

「――――!!」

人を呼ぶ男の声が聞こえて、前の女がキョロキョロと辺りを見回し、後ろを振り返った。
それはさっき丸井と話していた女だった。
俺と目があったが、気にした風もなく声の主を探している。
!こっちこっち!」
ようやく見つけたのか、女はその男の所に駆け寄った。
「コレ、お前が見たいって言ってた本」
男は分厚い本を差し出した。
「え!ホントに持ってきてくれたんだ!?ありがと!」
大げさすぎるくらいの声を出して女は喜ぶ。けれどそこに厚かましさはない。
「お礼は手作りのお菓子でいいよ!」
男はちゃかすように言った。
「お菓子!なんで知ってるの!?」
「丸井がさ、お前の作るお菓子おいしいって言ってたからさ」
「ブン太が?あいつは何でも食べるからねー」
そんなやり取りを横目で見て、俺は自分の教室に入って行った。



「なー!頼むよ仁王!この通り」
丸井が俺の前で手をついて頼み込む。
「何で俺が行く必要があるんじゃ」
「今日までなんだよ、このチケット」
丸井が手にしてるのは『ケーキバイキング』の無料チケット
「3枚あると?あと1枚はどうするんじゃ」
「あと1人はもう誘ってあんだよ。な?頼む」
部室で着替えていると、丸井が後ろから頼む頼むと連発してきた。

「それで俺に何か得があると?」
「うー・・・・ん。甘いもの食べ放題?」
「甘いものは好かんき」
「そこを何とか!」
この後の予定は特にない、暇を持て余すよりはいいか・・・・
「後で昼メシ奢るなら考えてもよかよ」
「うっ・・・・・痛ぇなソレ」
「それくらいは当然じゃろ?」
丸井はうな垂れて分かったと承諾した。

「そんで?誰を誘ったんじゃ?」
校門に丸井と2人歩く。丸井はなお甘いものを口にしている。
「女なんだけどよ、いいだろ?」
「お前の女じゃなか?」
「違ぇよ!クラスのヤツ。前から誘ってたんだよ」
校門に近づくと、一人の女がこっちに向かって手を振っていた。
「あ、いたいた!アイツ!」
丸井が手を振り返した先には、今日丸井が体育の時間話していた女だった。

です!ゴメンね、無理やりじゃなかった?」
女・・・・・・は頭を下げると申し訳無さそうに言った。
俺はとりあえず首を横に振ると、は安心したように笑った。


「ここだ!おい仁王!お前も食えよ!」
「ダメだよブン太、ついて来てくれただけでもありがたいんだから」
2人は余程仲がいいらしい。さっきから俺の知らない話題も度々出る。
中には女だらけだった。その中で俺達は際立って目立っていた。

「制限時間は60分だ、食うぞーーー!」
俺はというとバイキングにはないコーヒーを注文し、目の前に置かれた皿を見つめていた。
!勝負だ!」
「なんで!ブン太の方が食べるに決まってんじゃん!」
2人は勢い込んでケーキの並ぶテーブルに走って行った。
「俺は何をしとるんじゃ・・・」
正直ついてくる気はあまりなかったが、来てしまったものは仕方がない。

「仁王くんもテニス部なんだよね?」
大量のケーキを抱え込み、は聞いてきた。
「そうじゃ、お陰でこんな付き合いまでしなきゃならん」
「しょーがねぇだろぃ!チケット余ってんだし」
丸井が皿から顔を上げる。おいおい、口の周りクリームだらけになっとる

「大変だよね、ブン太に振り回されんのも」
「お前だって今日のバイキング楽しみにしてたじゃねーか!」
「だ、だってここのケーキおいしいって有名なんだもん!」
「その割には数が多くねぇか?」
「いいの!せっかくなんだからもったいないでしょ!?」
2人は言い合いながらもケーキをパクついている。
「あ、あたしちょっとお手洗いに・・・・」
「おーおー、全部出してこい!」
「ちょっと!汚いこと言わないでよね!」
は丸井に言うと、スタスタと歩いていった。

「仲いいんね、お前ら」
「んー?まぁな」
「何で女誘ったんじゃ?」
「んぁ?アイツ話やすいしな、他の女と違って」
「好いとんの?」
「よく聞かれっけど、そーゆんじゃねぇよ。アイツあんま女って気がしねぇし」
さらりと酷い事を言うもんだと、丸井を見るも全く気にした風もない。


「ふぁー食った食った!」
「ブン太食べ過ぎ!いいの?スポーツマンなのに」
「真田に怒られるき、丸井」
「いーんだよ!明日また朝練あんだし」
3人してドアをくぐると、肌寒い空気が頬を撫でた。

「そーいやぁ仁王とっておんなじ方向じゃね?」
「そうなの?仁王くんもあっち?わたしはそこからバスだけど」
「方向的には一緒じゃな」

俺達は丸井と別れると、同じ方向に歩き出した。
「今日はありがとね、付き合ってくれて」
「構わん、丸井の『お願い』にも慣れたき」
「そっかー、でも甘いものあんまり好きじゃないんでしょ?」
「好かんね、あんまり」
「だよねー、コーヒー飲んでたもんね。帰ってお金使わせちゃったね」
「コーヒーは好きじゃけん」
「そっか、じゃあよかった。じゃあわたしあのバスに乗るから」
そう言ってはまた大きく手を振るとバスに乗り込んでしまった。



次の日朝連を終えた俺は、自分の教室に向かって歩いていた。
するとまたもや昨日と同じ光景。
「この本ありがと、面白かった!」
「1日で読み終わったのか?」
「うん、止まんなくてね。お陰で寝不足。あ、あとこれ・・・・」
「マジで作ってきてくれたの!?」
「約束だしね。甘いよ〜?」
「俺甘いの好きだし。サンキュ!」

はその男に手を振ると、俺に気がつき走り寄ってきた。
「おはよ、仁王くん。昨日は楽しかったね」
「朝から元気じゃのぅ」
「これが取り得ですから。それでね、コレ」
はラッピングの施された小さな袋を取り出した。

「昨日付き合ってくれたお礼。ジンジャークッキーにしてみたから甘すぎはしないと思う」
その小さな袋をじっと見て、俺は受け取った。
「もし嫌いだったらブン太にあげてね」
「丸井にも作ってきたと?」
「ううん、だからブン太にはナイショね」
そう言って人差し指を口の前で立てた。


昨日俺達が別れたのは夜の7時過ぎ。
それからあの分厚い本を読んで、種類の違うクッキーを作ったのか?


『アイツあんま女って気がしねぇし』


どこがじゃ・・・・―――――
笑顔を振り撒いて走り去ったその背中をずっと見ていた。
丸井、お前は大事なものを見過ごしとる。

手の中に収まったジンジャークッキーを、壊さないようにしっかり握り締めた。

































仁王が分からない!口調も性格も!てゆうか長すぎ!
偽者ですが、話的には気に入ってます。
さんはこの後ニオに迫られ、落とされる予定・・・・。
こーゆうヒロイン好き。このヒロインで増やしたいな。
感想お待ちしてますv











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