居るだけで
「長太郎って、いるだけで和むよね」
ふと思いついたので言ってみた。
「そうかぁ?」と岳人はテーブルから顔を上げた。
当の長太郎は、照れたように笑っている。
「騙されたらアカンで。あーゆうんに限って腹黒いんや」
なぜか勝ち誇ったように、忍足は言った。
「わたしは忍足の方が腹黒いと思うけど」
にっこり笑って見せると、忍足もにっこり笑った。
「長太郎は和み担当だよね」
うん、と頷くと、横から岳人が俺は?と乗り出してきた。
「岳人は--------騒音担当ね」
なんだそれー!とか怒りだしたので、あえて知らない振りをした。
「忍足は1人漫才担当、宍戸は熱血担当、跡部はナルシスト担当……」
「あん?何で俺がナルシスト担当なんだよ」
「だって見るからに………ねぇ?」
「なぁ?そうじゃねぇの?」
「跡部は、財布担当や」
「てめぇは貧乏担当だろうが」
「なにっ!?何で俺が貧乏やねん!俺かてお坊っちゃまやねんぞ」
「でもゆーしってさ、貧乏くさいよな」
「そうそう。すぐ『もったいなーい』が出るしね」
みんなに責められて、忍足は俯き加減に俺かてお坊っちゃまやねんもんと呟いた。
「んでジローは?」
「ジローは寝る担当だ」
「違うよ、甘え担当だよ」
「それはお前が甘やかしてるだけだろうが」
「いいじゃん!可愛い子甘やかして何が悪いの!?」
「こぇー!!」
「うっさい!!岳人は飛び担当だ!」
「何でそんな意味分かんねぇのばっかりなんだよ!」
「岳人の行動が意味分からんからやろ?」
「ーっ!!クソクソゆーしっ!」
「宍戸さん………俺たち帰っちゃダメですかね?」
「ミーティングも終わってんだからいいんじゃねぇの?」
「この会話に意味があるんでしょうか?」
「さぁな、そんな事考えてたらこの部でやってけねぇよ」
「確かに………」
にとって長太郎は和みの対象であったが、
長太郎・宍戸からすれば、彼らはいるだけで煩いだけだった。
「跡部さんまで一緒になって………」
「何だかんだ言って楽しいんだろ」
宍戸が大きなあくびをして、長太郎はため息をついた。
04/11/12