□■ い じ っ ぱ り ■□
















不二を初めて見た時の印象は、なんて怖そうな人だろう というものだった 友達に言っても誰ひとりとして賛成はしてくれなかったけども わたしは不二の前に立つと畏縮してしまう わたしの考える事、言うことすべてが間違ってるんじゃないか・・・ 不二はわたしにそんな感情を抱かせた なにも言わずにただ笑ってるあの顔が、わたしは苦手だった だからなるべく近寄らないようにしたし、 不二が近くにいるときはわたしが遠のいた そうすれば害はないと思ったからだ 夏休みが終わっていよいよ次の学期 わたしは少なからず意気込んでいた 前学期の成績があまりよくなかったせいもあるけど ------ 宿題をサボったことは認める だけどこの仕打ちはあんまりだ 始業式の日から授業のあるうちの学校は、 日直も夏休み前の人と継続だ ただわたしは少し忘れていたのだ 黒板に並んだふたつの名前を見た その名前の上には日直の二文字 今日何度目かわからない溜息を吐く さん ------- 彼はあの透き通った声でわたしを呼んだ 「早く仕事終わらそう?」 無機質な明かりが照らす教室で、 不二は窓際に立ちながら言った 自分は何もする気がないらしい 少し不機嫌になりながらも、 わたしは日誌と書かれたその本を開いた 1時間目からやった科目を書いて 授業内容まで書くのだ 2時間目までは始業式で潰れたからいいとして・・・ 授業内容なんて少しも覚えていない 心の中でうんうん唸りながら進まないペンを眺めていた 「さんは僕の事きらい?」 唐突に投げかけられた質問に一瞬口篭もり、 不二に目を向けた こんな時だから目を逸らしてくれればいいのに そんな風に見据えられたら言える事も言えなくなってしまう わたしは妙に気まずくなってしまって だんまりを決め込んだ どうにか流してくれないかな、なんて都合のいい事を考えて だけどわたしの苦手な不二はそんな事しない それはわたしが一番よく知っているはずだ 不二は相変わらずわたしを見ていて、 いつ答えてくれるんだろうかと待っている わたしは悪い事をしたような気分になった 蛇に睨まれたなんとか-----だ。 「部活は行かなくていいの?」 答えたくない意志を汲み取ってほしくて、 話題を逸らした あぁ、もうこんな時間? じゃあ後はよろしく 不二がそんな人ならよかった なんでわたしなんかに構うんだろう 依然そこに立ち続ける不二は、案の定まだ平気と言った それよりもさっきから胸打つこのリズムはなんだろう 異様に早い これじゃあまるで勘違いしてるみたいだ なんで不二はわたしに構う------? 気づいてしまったらもう遅い 自意識過剰だと笑われても、わたしの顔は赤くなるばかりで おさまってくれそうにない 赤くなってしまった事実と、それを見られている羞恥心から 私は俯いて唇を噛んだ 不二はそれに勘づいたようで、クスリと笑う その音に反応して顔を上げると、わたしの苦手なあの顔で笑っていた なにもしてないのに弱みを握られてしまった気分だ 反撃を試みてみたけど、イマイチいい考えが浮かばなかったので わたしはまた俯くほかなかった それから不二は取ってつけたようにこう言った 「もうこんな時間だ、あと頼める?」 そう言うと、わたしの前を横切った なにもしてないくせに、と背中に言って 重そうなテニスバックをいとも簡単に担ぐと、 にこりと微笑んで教室を出て行ってしまった 未だ埋まる事のない日誌に目を移す 空けられる事のなかった扉に気づいてしまったように、 こころがざわざわした 扉の向こうの事はとうに知っていた 外に目をやると、不二がテニスコートに入っていくのが見えた * * * * * きゅうに不二で書きたくなりました。 あまり変化のないようなドリですが、 色々と込めました。ギュウギュウと。 ヒロインは元々不二が好きでした。 だから不二がどんなひとか知ってました。 でも自分を知られる怖さから苦手な振りをしてた・・・ というお話です。 ちょっとかわりずらいですね・・ 感想いただけるとうれしいです 04/8/30
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