エキスパート 「ねぇ、〜」 「うるさい、バカキヨ」 キヨの部屋で、さっきまでは甘い雰囲気だったのに。 なぜこんな事になってしまったのか。 わたしとキヨの距離は離れていくばかり。 キヨのベッドに座って、ケータイを弄る。 キヨはソファーに寝転がりながら、わたしの様子を見ている。 「だから、あれは友達だって」 「南くんが言ったなら信用されるよね、その言い訳は」 「えっ!?俺ってそんなに信用ない?」 ケータイの画面から視線を外し、キヨを見て、にっこり笑う。 「そんなの自分がよく分かってるでしょう?」 キヨの部屋に来るのは、今日で二回目。 ついさっき、わたしは帰ろうとしたんだ。 けれど、キヨのケータイを持ってきてしまった事に気がついて。 返すついでに、ちょっと悪戯心が疼いてしまった。 データフォルダを見ていた。 そしたら―――――― 「なにこれ!?」 写っていたのは女の子の写メ。 上目遣いで、可愛く決めてさ! だからキヨに問いただした。 「これはなに!?」 そしたら、あっけらかんと答えたのよ、「友達だよ」って。 どうして、よりによって女の子の写メが入ってるの? そんな問いにも、キヨは動じることなく淡々と答えた。 「友達に紹介するために、写メ取ったの」 だったらすぐに消せばいいじゃない! そんな訳で、わたし達の雰囲気はすっかりおかしくなってしまった。 「、まだ怒ってる?」 「別に」 素直になんてなれない。 あれだけ怒ってしまった後で。 「!」 まだ怒ってるのよ、と目で訴えて、わたしはキヨを見た。 キヨは立ち上がるとわたしの隣に座った。 スプリングがよくきいたベッドが、僅かに沈む。 「ゴメンね、すぐ消すから」 ピピッと操作して、キヨはわたしにも見えるようにデータフォルダから消去した。 そして、今度はアドレスを開き出す。 「・・・・・?」 キヨが何をしようとしてるのか分からない。 わたしは疑問符を浮かべたまま、ただその様子を見ていた。 キヨはアドレスの中から、女の子の名前を見つけ出すと、削除した。 「ちょ、ちょと何してるの!」 「なに、って見れば分かるでしょ」 「だって、そんなアドレスまで消すことないじゃん」 ケータイの画面から視線を外したキヨの目は、いつになく真剣で。 「だって俺に嫌われたくないし」 また操作を始める、女の子の名前がどんどん消えていく。 「いいよ、キヨ。そこまでしてくれなくても」 「どうして?」 「だって、連絡取るのに不便でしょ?」 「そんなの、以外の女の子と連絡なんて取らないし、なにより」 「・・・?」 「以外の女の子は必要ないしね」 今度はキヨがにっこりと笑った。 そうだった。いつだってわたしは満たされてた。 我侭を言って、それでもキヨは笑って許してくれて。 「ゴメンキヨ、やっぱり好き」 「知ってるよ」 こつんとキヨの肩に頭を乗せると、大きな手で撫でてくれた。 いつだってわたしの扱い方を心得てる。 どうしたらわたしが喜ぶのか、幸せになるのか。 キヨの手で、言葉で、仕草で わたしはどうしたって幸せだと、思ってしまうのだ。
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