もうひとりの自分が、目を覚ます―――――






僕の好きな人














「長太郎、ゴメン!待たせたね」
そう言って笑う先輩。笑顔がとても好きだ。
連れ立って歩き出した道は、もう色を無くそうとしてた。 陽が延びてきたとはいっても、まだまだ夕方は冷える。 少し寒そうに首を窄める先輩を見下ろす。 夕日に照らされた髪がキラキラと光っている。 前から吹いてくる風が、何もかも壊しそうだ。 細い肩を見ていると、時々思うことがある。このまま抱いてしまいたい。 先輩のすべてを自分の物にしてしまいたい。こんな感情は間違ってるのかな。

「――――・・・って、ね。聞いてる?」
「え、あ・・・はい。すいません」
「どうしたの?疲れた?」
「いえ、大丈夫です」

見上げてくるその目も、唇もすべてを奪ってしまいたい。
耐えられずに、視線を外した。

「どうしたの?」
立ち止まった先輩が、俺のシャツを掴む。
それにつられて、俺も立ち止まった。
「いえ・・・・・その――」
「なにか・・・・・言いたいことでもあるの?」
「え、えっと・・・・・」
思わず黙り込んでしまった。
先輩が訝しげに俺を見上げた。

言えない。言ってはいけない。心に広がるたくさんの渦巻く動揺。 それを悟られてしまいそうだ。先輩の目はそれほど真っ直ぐだった。 留めておけないほどの大きな気持ち、制御できるか自分でもわからない。

太陽がなくなっていく。光が小さくなった。

「最近ぼうっとしてること多いよね」
「そう、ですか?」
「見てれば分かるよ」
シャツを掴む手に力が入った。皺くちゃになってしまった裾。
その手にそっと触れる。先輩の手が一瞬震えた。

「・・・・・もう一緒にいるのがイヤ?」
涙目で、見上げてくる目に、愛おしさを堪えきれない。
腕を引き寄せて、その小さな体を抱きしめた。

「離れられる訳がないじゃないですか」
「じゃあどうして――」
くぐもった声が、体を通して聞こえてくる。

「先輩と一緒にいると歯止めが利かなくなるんです」
「え?」
体を離して、見下ろした目は涙で濡れていた。

「こんなに独占欲が強いなんて思ってもみませんでした」
「え、なに。どういうこと?」
「キス・・・・――してもいいですか?」

先輩が何か言おうとしたのを遮るように、唇を塞いだ。
俺の腕を掴む先輩の手に力が入った。
何もかもを奪うように、すべての不安を掻き消すように。

「んッ―――」

唇を離して、間近で見詰め合った。
息遣いがかかるほどに。

「好きです、先輩」
「うん、わたしも」

微かに笑いあった後、再び口付けを交わした。

温かい――

それは体温のせいなのか、それとも・・・・・・。

こちらを照らす明るい月が、微笑んでいるようだった。






























詩真様、一年記念おめでとうございます!
遅くなってしまいましたが、長太郎ドリ捧げます。
付き合って3ヶ月、一番微妙な時期ですよね。
そんな2人を描いてみました。何て分かりにくい・・・・。
静かに嫉妬する長太郎でした。詩真様のみお持ち帰り可です。


































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