珍しくワタリさんからの呼び出し。
わたしは首を傾げながら竜崎のいるホテルへと向かった。
甘い君への処方箋
ドアを押し開けると、いつもは捜査員の人たちがいるというのに。
怖いくらい静かなその部屋には、人の気配がなかった。
「竜崎------ ?」
足音を立てないように奥に進むと、キッチンからワタリさんが出てきた。
「お呼びだてしてすみません」
「いえ、いいんです。それより竜崎は・・・・・・」
「寝室に」
「寝室!?」
寝る時はいつも椅子の上。それが毎度のことだった。
そんな珍しい事もあるのだと寝室のドアを開けた。
「竜崎?いるの?」
布団が少し盛り上がっている。それは彼がいるという証だろう。
静かに近づくと、若干眠たげに目を開けた。
大きな目をこすって、起きたばかりの掠れた声を出す。
「、来てたんですか?」
「うん、ワタリさんに呼ばれて。どうしたの?」
「いえ・・・・」
歯切れが悪い。何かを隠してる。
目を泳がせている竜崎に顔を寄せると、一層顔を赤くして・・・・・。
「もしかして-----風邪?」
「・・・・・はい」
赤い顔に、潤んだ目。どう見ても風邪だ。
「甘いものばかり食べてるからよ」
「それとこれとは・・・・」
「関係あるの!栄養偏ってるんでしょう」
「・・・・・・・」
「何か食べたいものは?」
「ケー・・・」
「おかゆね、分かった」
にっこり笑うと、不満そうに睨んで布団の中に隠れてしまった。
まるで子供みたいだと溜息を零してキッチンに行く。
「すみません、わたしの管理が行き届いていないばかりに・・・・」
「ワタリさんの所為じゃありません。自己管理の問題です」
「竜崎は何と?」
「風邪だというのに甘いものが食べたいそうです」
「そうですか・・・・・・」
「大丈夫です。こう見えて料理は得意なんです」
「では、お任せしても・・・・?」
「えぇ。竜崎に白いご飯を食べさせますから」
ワタリさんは安心したように部屋を出て行った。
きっと他の捜査員の方達のところだろう。
「さてと・・・・・」
ご飯と鍋を取り出し、わたしは料理を始めた。
出来た料理を竜崎の前に持っていくと、案の定苦い顔をした。
「何よ、その顔」
「これは・・・・・・」
「おかゆよ?」
見た目は真っ白なただのおかゆ。
「食べてみて。びっくりするから」
嫌々ながら、竜崎は蓮華に手をつけた。
「甘い・・・・です」
「でしょう?美味しい?」
「はい。は私の好みを良く分かってますね」
「そりゃあ当たり前じゃない」
じゃなきゃあ貴方の恋人なんて務まりませんという言葉は呑み込んだ。
竜崎はお碗にいっぱいのおかゆを平らげると、横になった。
「他になにかある?」
「寒いです。すごく」
「じゃあ湯たんぽ・・・・・あるかなぁ」
「多分無いと思いますよ」
「じゃあどうしよう」
迷っているうちに、竜崎が横から手を引く。
「なに?」
「が湯たんぽ代わりです」
「え?それって」
「一緒に寝ましょう」
有無を言わさず、わたしはベッドに潜り混む事になった。
竜崎の体は熱の所為でとても熱い。
わたしはぴったりと竜崎にくっついた。
苦しいのだろうか、荒い息遣いが聞こえる。
「苦しい?」
「さっきよりはマシです」
「ちゃんと布団で寝ないからよ」
「ならがいつも一緒に寝てくれますか?」
「いつもって訳にはいかないわ」
「じゃあ百歩譲って一日おきに」
「ほとんど変わらないじゃない」
くすくすと笑うと、竜崎の肩も揺れた。
「これなら風邪を引くのも悪くないですね」
「でも捜査員の人たちが困っちゃうわよ」
「ですが、これには変えられません」
そう言うと、抱きしめる力を強めた。
「たまには一緒に寝てあげる」
寝入ってしまった竜崎に聞こえたかどうかは分からなかった。
わたしは竜崎の胸に顔を埋めて、夢の中に溶け込んだ。
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飴屋様からのリクでした。
恋人同士のL。
いつものヒロインとは違います。
風邪を引いたLは可愛いと思う。
飴屋様のみお持ち帰りOKです。